今を越えるために、今を記録する。

EVELA(イベラ)は、時代の熱源となるカッティングエッジな“イベント”と“人”を取材し、2020年代のうねりを見える化、そして未来へ記録するプロジェクトである。

2020年3月11日、WHOが新型コロナウイルス(以下、COVID-19)によるパンデミックを宣言。同年3月24日、これを理由に東京2020オリンピックの延期が発表された。近代五輪が延期となったのは歴史上初の出来事である。本来、3月26日から福島県を出発地点に聖火リレーが始まる予定であった。

COVID-19が人類に及ぼしたのは健康被害だけではない。感染拡大を防ぐため、人々が過密に集まる“イベント”は次々と中止や無観客公演せざるをえなくなっている状況だ。また、夏までの仕事を全て失い途方に暮れるクリエイターや、集客も休業もできない状況下に陥った飲食店なども身近に増えている。

このテキストは、都から都民に感染拡大を防ぐための外出自粛要請が出された4日後の東京、つまり3月29日に、4月1日のEVELA公開に向けて悩みながら書いている。

この日は朝から雪が降り積もった。東京における桜満開後の積雪は、実に51年ぶりだという。

不要不急の外出を控えなければならないことは理解しつつも、友人の自営する飲食店がどうしても気になったため少し様子を見に行くと、みな同じことを考え集まったのだろう、マスクを付けている以外はいつもと変わらない仲間たちの顔ぶれが見れ、少しホッとした。

案外街には人がいて、近所の公園では子供達が無邪気に駆け、雪だるまが濫立していた。一方で、中目黒の駅前では警察官が「目黒川で花見をしないように」と拡声器で懸命に呼びかけていた。現実感の薄い、不条理な風景であった。

世界の状況が、日々目まぐるしく変化している。

EVELAは昨年末に“イベントレポート”と“キーパーソンへのインタビュー”の2軸から20年代のうねりの予兆を切り取ろうというコンセプトを立て、今年2月から取材を開始した。正直、2月初旬の当時はまだ、首都封鎖が現実味を帯びてきた現在ほど、COVID-19のインパクトにリアリティをもつことはできていなかったし、情報が混線し先行きが見えづらかった。

本来はこのようなステートメントをかねた原稿ではなく、2月に取材した某イベントのレポート記事を公開する予定だった。しかし昨今の状況を鑑みて、集団での濃厚接触を連想させるイベントの記事は不安を煽りかねないので掲載を見送るべきと判断し、代わりにこのテキストを上書きしている。

一方で、サイト自体のコンセプトを変えることや公開を延期することはしないという判断も行った。3月の取材記事からはイベントレポートも載せていて、きっとそれを読んでもらえれば意図は理解できるだろう。

この状況だからこそ、将来への学びとし、2020年代らしいオルタナティブなイベントの在り方を考えるキッカケにしたい。10年後にこのディケイドを振り返り、意義のある記録を残したい。イベントを愛する我々のプロジェクトだからこそ、今始めなければならないのだ。

SNSにコンテンツが飽和し、多様な情報や選択肢に溢れる現代。改めて、人々がひとつの空間に集まり同じ体験をすることの尊さや、それをキッカケに何かが生まれる喜びを、共にふたたび考えたい。時代の風を吹かすのはイベント、そしてそこに集まる人々の熱なのである。

Tetsutaro Saijo

「EVELA」

Editor in Chief, Creative Director|Tetsutaro Saijo
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Depuy Editor|Shinya Yashiro
Senior Editor|Rio Homma
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Curator|Reiko Itabashi
Curator|Masaki Miyahara
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Photographer|Victor Nomoto
Art Director, Designer|Yuria Takayama
Programmer|Jun Inagaki
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Production|METACRAFT